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  • サークル名:原風景を歩く(O.C.)


    「ふるさとの川」といえば、誰もがこの歌を思い浮かべることでしょう。
    「春の小川はさらさら流る 岸のすみれやれんげの花に 
    匂いめでたく 色うつくしく 咲けよ咲けよと ささやきながら 」

    そこには、春の川面のぬくもりや岸辺に広がる花たちの色や香り、その上をそよぐ春風のさわやかな音さえも感じられ、川遊びに疲れた子供たちが堤のスギナの絨毯の上に寝そべり、白い雲の流れに目をやっている姿が想像されます。

    ここに歌われる川は大平原を流れる大河ではありません。険しい山岳地帯を下る渓流でもありません。のびやかな山之辺の田園を静かに下る小川であり、子供たちが遊べる川幅であり、川の深さなのです。

    私は幼年時代から少年時代にかけて、和歌山県の小さな田舎町で過ごしました。小学校から家に帰る途中に川が平行して流れており、橋の下に隠しておいた網やバケツを学校帰りに取り出して鮒捕りをしていました。放課後を川の瀬や川原で過ごした少年たちは、夕暮れが近づくとやっと水から上がり、半日の成果の入ったバケツを手に、堤に生えているグミの実を採って、口にほおばりながら家路についたものです。

    少年たちは、深い淵に紅い鯉が棲みついていることを知っていました。しかしその淵のことは秘密にしており、それぞれ何度か鯉を捕まえようと挑戦しましたが、ついに誰も捕まえることはできませんでした。
    やがてみんな中学生になって、この川で遊ぶこともなくなり、私もこの町から引っ越しましたが、大人になってからもその鯉は何度も私の夢の中に現れ、その紅い色は夢の中でも鮮やかなままなのです。

    他の町の川を見たことのなかった少年の記憶の中のふるさとの川は、今見るよりずっと広く深く大きく、世界で一番の川だったのです。

    コメント8件を表示する 2008/03/01 09:03

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