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  • サークル名:原風景を歩く(O.C.)


    湖西の水辺―生水の郷、針江
    ■近江の水

     近江の地図を思い浮かべてみよう。
     真ん中に近江の面積のかなりを占める琵琶湖があり、その周囲を千m級の伊吹山や比良山系が囲み、山々から短い流れが琵琶湖に向かって下っています。
     山に降った雨や雪解け水が、伏流水となって山麓や琵琶湖畔で再び湧き水となって姿を見せます。
     田植えを迎える頃、近江の田園はすべてが水に満たされ、瑞穂の国の豊かさを表しています。琵琶湖周辺の集落を流れる水路は澄み、伊吹山や霊仙山の麓にある醒ヶ井宿や、愛知川流域の五個荘の水辺で野菜を洗う情景や、水辺に植えられた菖蒲などに出会うと、水のもたらす風景が、近江の人々の心と生活を豊かにしていると感ぜずにはおれません。

    ■生水の郷「川端(かばた)」

     湖西では比良山系の水が伏流水となって下り、針江の村あたりで湧き水となって姿を見せます。地元では、この湧き水を「生水(しょうず)」と呼んでいます。
     針江公民館で案内をお願いすると、竹筒に紐をつけたコップを渡され、コップを首に下げて、各家の湧き水を汲みながら歩くことになります。
     どの家でも敷地内から水が湧き出ており、「川端(かばた)」と呼んで、各家で大切に守られています。
    「川端」は、湧き出た水が飲み水や炊事用に使われる「元池」、その周りには元池からあふれた水で野菜などを洗う「坪池」、さらに下って、食器や釜についた米粒などを鯉がつついている「端池」で構成されています。よく育った鯉が、人をおびえる様子もなく、の背びれで水面を切っています。

    「こうして釜を水につけておくと、鯉が勝手につついて食べてくれ、汚れた水を水路に流さずにすみます」
    「うちの鯉は、カレーが好きでね」と笑っておられます。
    「洗剤は使われないのですか」
    「琵琶湖を汚さないように工夫された特別なもの以外に、一般の洗剤は使っていません」
     薄暗い「川端」の小屋に入ると、ひんやりとした空気が漂っています。
    「ずいぶん涼しいですね」
    「『川端』のある小屋では、外と温度が2度ちがいます。湧き水の温度は、一年を通じて13度程度です。夏は冷たく、冬は暖かいですよ。飲んでみてください」といわれて、首にたらした竹筒で元池の水を汲むと、のどを心地よい冷たさが通り過ぎてゆきます。
    「どれぐらい掘れば、水が湧いてきますか」
    「普通20mくらいですね。うちでは6mも掘ると湧いてきます。家の中にあるのを「内川端」、外にあるのを「外川端」と呼んでいます。

     お訪ねした家々の「川端」では、湧き水で手作りの豆腐や筍を冷やしており、壁には笊(ざる)や籠(かご)がかけられ、棚には櫃(ひつ)や漬物石がきれいに洗って並べられています。

     「環境、環境」と、声高に叫ぶ以前から、村の人たちは豊かな水を大切にし、村という共同体の生活を大切にし、そこに棲む生き物たちの生活にまで心を配ってきたのです。澄んだ水は、一人ひとりに意識と村の共同体があってこそ今に生きているといえます。

    写真
    1.早朝の琵琶湖と伊吹山
    2.針江の民家
    3.民家のそばを流れる水路
    4.「川端」の湧き水
    5.「川端」には鯉が


    コメント4件を表示する 2011/05/31 11:54

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