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  • サークル名:原風景を歩く(O.C.)





    ■針江大川の鮎

     針江大川の水面で、空から降る光がはじけ、ことことという心地よい水音が水面に踊り、水の匂いさえ伝わってきそうな流れの中で、緑の藻が揺らでいます。
    「濃い緑の藻が梅花藻(バイカモ)、薄緑色の藻が石菖藻(セキショウモ)です。増えすぎると、流れが悪くなるので、年に四回くらい藻刈りをしています」
    「きれいな流れですね」
    「水路の水の7割は『川端』の湧き水、3割が山から流れてくる水なのです。家々の『川端』から湧き出した水を集め、小さな水路からだんだん大きな水路になり、やがて針江大川に集まってくるのです。村の人は、自分の家の水で下流の人の迷惑にならないように心がけています。それに変なものを流せばすぐ誰が流したか分ってしまいますけどね」

     梅花藻のそばを小魚の群れが上流に向かっています。
    「たくさんいますね。ハエですか」
    「いえ、鮎です。今こうして琵琶湖から川を遡ってくるのです。琵琶湖の鮎は『湖鮎』と呼ばれて、よその鮎のように海に下ることはなく、一生琵琶湖と周辺の川で過ごすので小さいのです」
     川でこんなにたくさんの鮎を見るのははじめてです。一匹一匹が縄張りをもって生息している姿を想像していたので、この小魚の群れが鮎だとは思いもしませんでした。
     梅花藻と鮎・・・それらは、澄んだ水の象徴なのです。



    ■水路の鯉

     「川端」だけでなく、村を巡る水路でも鯉の群れが背びれで水面を切りながら群れ、水面に広がる波紋に日の光が照っています。観賞用の鯉というわけでもなく、持ち主がいるわけでもありません。半ば自然のまま自由に、半ば村の人たちとの共同生活を営んでいるという姿です。
     「ずいぶん大きな鯉が、水路を泳いでいますね」
     「以前、中国からこの村に取材に来られたことがありました。そのとき、記者の方がびっくりされていましたよ。『中国ではこんなところに鯉を放していたら、一晩でなくなってしまいますよ』ってね」
     湧水が豊富なだけではありません。この村にはお互いに水を汚さない心づかいがあり、持ち主のいない鯉を育てる心があるようです。

     日本各地に、農家の人たちが野菜を道端に並べている無人販売所があります。信頼によって無人で売られているのです。震災の後にも略奪などが起こらない国であり、それが当たり前のように感じていますが、世界を見渡した場合、それはむしろ特殊なのかもしれません。それこそが私たちの村に残っている、誇っていい資質なのです。
     この水路で鯉の泳ぐ村は、国民総生産、経済成長率や資源の量で計る豊かさではない、もうひとつの豊かさの意味を考えさせてくれる村なのです。

    写真
    (1)川端(かばた)から水路へ
    (2)針江大川のバイカモが咲く
    (3)川には鮎の群れ
    (4)鯉も群れも
    (5)悠々と泳ぐ鯉
    コメント8件を表示する 2011/06/06 10:57

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