スローネットは新サイトに移行いたしました。今すぐアクセス

  • サークル名:原風景を歩く(O.C.)


    ■安曇川流域の田園―れんげと麦秋と青田

    針江の集落を離れ、針江大川に沿って田園を歩いてみましょう。
    比良山系が琵琶湖に迫る琵琶湖西岸では、安曇川流域の三角州だけには、唯一広々とした田園が広がっています。
    春が過ぎ初夏を迎えようとする今日、田園はレンゲの紅紫と麦秋の黄金色と田植えを迎えた青田がモザイク模様をなし、つかの間の鮮やかな色模様を描いています。れんげはわずかに紅紫を残し、麦畑は金色の穂先が白く霞み、青田がみずみずしく感じられます。

    梅雨を迎える前の晴天の空の下を、口笛を吹きながら、麦秋と青田の広がる野道をどこまでも歩き続けていたい風景です。
    一本の水路を隔てて、左手には麦秋風景が、右手には青田風景が広がっています。訪れるのが一週間早ければ、水田ではまだ田植えがはじまっていなかったかもしれないし、一週間遅ければ、麦畑は刈り終えて麦秋風景に出会えていなかったかもしれません。

    この麦秋の中を歩きながら、ある映画のシーンを思い出しました。黒澤明監督の映画「夢」の中で、寺尾聡扮する青年が、ゴッホの麦畑の絵を見ている内に、絵の中の風景に引きこまれ、延々と続く麦畑の中を歩いてゆく情景がありました。
    目の前の金色に染まる麦畑の風景の中にゴッホの油絵を感じ、雨に煙る水田風景の中に広重の浮世絵を感じます。
    いま水を引かれたばかりの田では耕運機が働き、その後ろでは、アマサギやカラスたちが耕された土の跡をほじくっています。どうやら耕された土の中から出てきた虫をついばんでいるようです。そういえば子どもの頃、田を耕している牛の後をカラスがついて歩いていました。今やカラスにとって、耕運機が頼りになる牛の役割を果たしているようです。
    田に水が引かれると蛙の声が聞こえはじめます。ケリもそろそろ水田に姿を見せ、鋭い声を上げて、他の鳥を追い払っています。ツバメが水面すれすれに細い線を描いています。
    いきものたちは、すでに初夏の準備に入っているようです。

    ■魚の道、魚の住まい

    琵琶湖に近づくにつれて、麦畑は消え、水田一色となってきます。
    「この水路と田んぼをつないでいる板は何ですか」
    「これが『魚道』です。もともと鮒などの魚は水路から田んぼに入って産卵し、育ち、再び水路を通って琵琶湖に戻っていったのです。田んぼは川よりも水温が2、3度高くて、魚が育ちやすいし、大きな魚からも身を守ることが出来るのです。
    昔は水田と水路の水面が同じ高さだったのですが、いまは水田の方が高くなってしまい、魚が自力で田んぼに入れなくなってしまいました。それで、水路に堰を作って水を溜め、このように水路から田んぼに入るための『魚道』をつくっているのです」
    その隣には、一見耕作放棄された田のように見える、水と草むらが混じった湿地帯があります。
    「ここがビオトープ。休耕田を使って、草の茂っている水辺でトンボたちが育ちます」

    田と水路と琵琶湖。田と水路と琵琶湖はつながっており、田は稲作の場であると同時に、魚たちの産卵や成育の場であり、水路は潅漑のための導水路であると同時に、魚たちの道でもあるのです。田と水路と琵琶湖は、の農業や漁業生産の場であると同時に、いきものたちの一連の生態系を作り上げているのです。
    現在の自然は、昔の自然そのままではありません。いきものたちが人間に施してくれたことに、人間も応えなくてはなりません。最近よく使われる「地球にやさしい」とか「環境にやさしい」という人間が使う言葉は、あまりにおこがましいとは思いませんか。

    (写真)
    (1)麦秋とれんげ畑と青田のモザイク
    (2)左は麦秋、右は青田
    (3)魚の道-水路から田んぼへ
    (4)トラクターを追うサギたち
    (5)あぜ道のお地蔵様
    コメントする 2011/06/19 11:51

    原風景を歩く(O.C.)のイメージ

    原風景を歩く(O.C.)

    サークル
    パブリック
    誰でもフォロー可