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  • サークル名:原風景を歩く(O.C.)


    ■ 内湖の風景を生み出すもの

    針江大川が琵琶湖に接するあたりは、静かな内湖となっています。
    流れも漣(さざなみ)もない、眠るような静かな水面に、おだやかな五月の空と樹の影が溶け込み、岸辺には昨年の葭と今年生まれたばかりの葭が混ざり合って、内湖特有の風景を作っています。
    もはや出番のない二艘の老舟が古木につながれ、水面に黒い影を落として黙り込んでいます。針江大川の湧き水が内湖を澄ませ、静けさが内湖のすべて覆っています。それは、筆に水をたっぷり含ませて描いた水彩画の似合う風景です。

    水中にまで葭が広がっているのか、それとも葭原に水が浸入してきているのか、どこまでが陸地で、どこからが湖なのか、またどこまでが針江大川で、どこからが内湖なのかも分りません。水面と葭原が滲みあっているところ、それが内湖の風景なのです。

    「三五郎さんの舟着場で『映像詩里山命めぐる水辺』が撮影された場所です。水鳥や魚、小動物が生息しています。そっと静かにご覧ください」
    そんな看板が立っています。
    そういえば、以前そんなドキュメンタリー番組を見たような記憶があります。この土地の漁師、田中三五郎さんがお元気な頃、長年手入れをされていたという内湖の風景です。

    案内してくれた方がこんな話をしてくれました。
    「この葭原の広がる水辺は、鮒などの産卵場所であり、小魚たちが安心して外敵から身を守れるところなのです。このあたりの水と陸の境には、大きな動物が入り込むこともなければ、ブラックバスなどの魚も入ってこないのです」
    「しかしこの内湖も放っておいたら、藻が繁殖しすぎ、浮遊ごみがたまって、流れが悪くなり、水がよごれてきます。それでときおり藻刈りをしています。ここに積んでいる藻も、先日タイの学生さんたちが、藻狩りをしてくれたものです。学校の環境教育の一環として、各地の学校の生徒さんたちも来てくれます」
    これが自然と人の営みが織り成す湖西の内湖の風景です。

    ■針江浜

    湖周道路に沿って、芽吹いて間もない葭原とタチヤナギの林が続いています。冬にはここからも琵琶湖が望めたでしょうが、今は枝を張ったタチヤナギが茂り、湖は見えません。
    水辺は遠いのだろうか・・・確かめてみたくなって、道からタチヤナギと葭原の混ざる原に下ってみると、靴はたちまちズブズブと沈んでゆきます。すぐ足元から、目に見えない水辺がはじまっていたのです。ここもやはり琵琶湖の小魚や水鳥たちの揺りかごだったようです。
    ここが針江浜。案内してくれた方が、葭原を指差しながら話してくれました。
    「葭原に囲まれて小さな池のようになった水辺で、魚たちは産卵します。そこは琵琶湖本体とは切り離されており、外敵から守られていて安心なのです。しかし水が減ってくると、魚たちは乾いたところに取り残されて死んでしまいます。そこで水路や魚道を作ったり、ポンプで水を送ったりして、魚たちを守っています」
    「また冬には、よく新芽が育つように、葭原に火を入れています。この緑の葭原が今年芽吹いたのもの、向こうの枯れたのが去年のものです。予算の都合で、毎年全部に火を入れることが出来なくってね」
    一見自然そのもののように見える葭原も、やはり魚や水鳥などのいきものと人間の営みが織り成す風景なのです。
    琵琶湖の風景は、琵琶湖を囲む山々とそこから下る川や伏流水、そして内湖と田園、それらすべてが一体となってかもし出される情景なのです。

    ■琵琶湖の漁法と文化

    初夏の陽射しを避け、針江浜のタチヤナギの陰で休んでいると、漣(さざなみ)が岸辺に打ち寄せ、水中に立つタチヤナギの影を揺らせて、湖面に青い浴衣(ゆかた)模様を描いています。 小鮎の背びれから生まれてくるような小さな波、琴の音が生まれてきそうな小さな波肌・・・漣(さざなみ)・・・穏やかな琵琶湖を表すこんな美しい言葉が、やがて琵琶湖の枕詞となっていきました。
    目を沖に向けると、舳先にシャベルカーのようなものをつけた舟が、湖面を滑ってゆきます。他では見たことのない不思議な姿の船です。
    「おもしろい形の船ですね」
    「鮎を捕る船なのですよ。舳先についているシャベルのようなもので、水面に上がってくる鮎をすくいとるのです。でも今年の鮎はすばしこくってね、すぐ深く潜ってしまうらしいのです」
    琵琶湖特有の鮎漁が、琵琶湖特有の船を生み出したのです。
    以前、近くの岸辺から早朝の狭霧の中で、竹生島を望んでいたときに、?(えり)と呼ばれる魚を獲る仕掛けを見たことがあります。?(えり)の影が紫苑色の水面に黒い影を落とし、漣(さざなみ)が縮緬模様を描き、白鷺が?(えり)を止まり木にしてまどろんでいました。?(えり)もやはり琵琶湖特有の漁法
    コメントする 2011/06/24 08:17

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