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  • サークル名:原風景を歩く(O.C.)


    ■醒ヶ井宿―梅花藻(ばいかも)がゆらぐ

    北国街道と分かれた中山道は、ときには国道と交わり、ときには国道に吸収されて、ちぎれちぎれになりながらも、伊吹山と霊仙山に挟まれた地帯を東に向かってゆきます。やがてトラックが激しく行き交う国道からはずれると、山裾を清流が流れる旧街道に入ってゆきます。ここが中山道六十九次の内、六十一番目の宿、醒ヶ井宿です。

    江戸期に美濃から峠を越えてこの宿にたどり着いた旅人は、秋とはいえ、まだ地蔵川に紅色を映す百日紅(さるすべり)の下で、水辺に下りて汗をぬぐい、おもむろに両手で水をすくって、のどを潤したことでしょう。そして地蔵川の水の想像以上の冷たさに、癒されたことでしょう。
    そしてひと息ついたところで、地蔵川にゆらぐ梅花藻(ばいかも)の緑の中に、長かった夏の名残の白い花を見つけ、心和んだことでしょう。さらに、水面に映りこんだ楓や木漏れ日を見つけたころには、すっかり汗もひき、この宿の水辺の魅力に浸ったことでしょう。

    ■醒ヶ井の湧水

    地蔵川を遡ると、流れは突然途切れ、岩間から水が湧き出しています。水面に映る白雲と水底に揺らぐ秋の光の他に遮るものはないほど、水は澄み渡っています。あちこちで水底の砂が膨らみ、そこから水が湧き上がって砂を躍らせています。この砂の下に、不思議な生きものが棲み、ときおり深呼吸して砂を躍らせているようです。
    この湧水は、いったいどこから来るのでしょう。伊吹山は天候の変わりやすく、冬には日本有数の豪雪地帯となり、伊吹山と霊仙山に挟まれたこの地域では、山に降り注いだ雨や雪が、何年もの時を経て、再び山麓で泉となって湧き出し、村人のいとなみを潤してきました。

    山は、降り注いだ雨を地中に蓄える巨大な水瓶であり、泉は枯れることのない蛇口のようなものかもしれません。
    いい湧水のあるところには、いい山があります。いい山の麓には、いい湧水があります。静岡県の柿田川の豊かな湧水は、富士山が蓄えた水であり、大分県の竹田地域の湧水群は、久住連山や阿蘇山が蓄えた水であり、会津喜多方の湧水は、万年雪の飯豊連峰が蓄えた水なのです。水を守るということは山を守るということであり、山を守るということは、水を守ることなのです。

    ■「居醒(いざめ)の清水」

    ここには、日本武尊(倭建命・やまとたける)にかかわる伝説があります。
    東征を終えた日本武尊は、伊吹山の神を征伐しようと山に向かいました。登りはじめてしばらくすると、牛のように大きく白い猪が現れました。この白猪は伊吹山の神自身が変身したものであり、山の神は大氷雨を降らせたため、日本武尊は大きな痛手を被って、伊吹山を下りました。
    そしてこの泉にたどり着き、清水を飲むと高熱が醒めたといいます。そこからこの泉は「居醒の清水」と呼ばれるようになり、「醒ヶ井」の地名の由来ともなっています。
    日本武尊は、そのとき清水の中に、梅花藻の緑と花の白さを目にしたでしょうか。そしてもう一度、伊吹山を仰いだでしょうか。
    尊大な心で山を目指した日本武尊を「大氷雨」で退けたのが、伊吹山の神であれば、日本武尊の高熱を癒した「居醒の清水」も、伊吹山の神の水です。人は山の奥深さを思い知らされ、また山に癒されもしてきました。

    (写真)
    1.醒ヶ井の宿
    2.醒ヶ井の湧水―居醒の清水
    3.流れにばいかもの花
    4.紅葉が水面に映る
    5.日本武尊と伊吹の白猪
    コメントする 2011/10/09 11:31

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