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  • サークル名:原風景を歩く(O.C.)



    ■ ふるさとに生きる―平にて

    串柿の並木に導かれるように、村の道を登ってゆくと、作業場でお婆さんが黙々と柿の皮を剥いている。いまでこそ機械が使われているが、以前は包丁ひとつで皮をむいていたのだろう。今も柿の蔕(へた)だけは、機械にかけるのは難しく、鎌で手際よくはつっているが、そのお婆さんの技能には誰もかなわないという。
    剥かれた実は、横の函に投げ込まれ、みるみる満杯になってゆく。その後、柿は串に刺されて、柿場に干されてゆく。ただ干しておけば串柿が出来上がるのではない。
    そもそも串柿は正月の鏡餅にのせるお飾りであり、鏡餅の上にのせるには、丸いままの柿では用を足さないため、ときおりローラーにかけて平らにしてゆくのだという、それも一度に圧力をかけるとつぶれてしまうため、ローラーにかけては干し、干してはローラーにかけ、回を重ねて平らにしてゆくのだという。さらに柿の表面に糖分が白く噴出するまで干されて初めて串柿の完成だという。
    作業場の外には、柿の皮が干されている。何に使うのだろう。皮は皮で柿茶として利用され、後に業者が集めにくるのだという。
    そんな長い時間と手間をかけて串柿は作られ、しかも実も皮も捨てるところはないらしい。

    「串柿」とは、食品というよりも、関西特有の正月の鏡餅のお飾りである。10個の柿を、2個、6個、2個と並べて串に刺し、「ニコ(2) ニコ(2)と仲むつ(6)まじく」と、語呂合わせをした縁起物である。関西の鏡餅用の串柿は、ほとんどここかつらぎ町の四郷で作られている。

    このおばあさんは金山寺味噌も自分でつくっておられるという。金山寺味噌は、大豆と麦麹をベースに、茄子、瓜、生姜など、元々家庭の余りものを混ぜて仕込んだ。紀州特有の味噌であり、おかずや酒の肴とされている。紀州の質素な生活から育まれた味噌である。
    紀州には、メジャーな食品ではなく、その土地だけで作られ、ある地域内で消費される「地産地消」の特産品が多い。串柿、金山寺味噌、熟れ寿司、すずめ寿司、梅干・・・・・それらの地域や家々での慣れ親しんだ味は、他のものには変えがたく、紀州出身の私にとっては今もふるさとの味であり、紀州に戻るごとに買い求めることにしている。今日も金山寺味噌を分けてもらうことにした。

    コメントする 2011/11/15 12:39

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