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  • モデレータの目(2011年12月4日)

    ○キャッシュフロー重視
     今から20年前なら「長期投資すべき会社」のイメージは明確でした。「成長企業」のひとことで結論付けてもあまり反論を受けることはなかったでしょう。

     成長企業(の株式)に長期投資すれば、成長の果実=キャピタルゲイン、が得られる、つまり、「第二のソニー、ホンダ、任天堂等々」を見つけ出して長期視点で投資する
    (買って長期保有する)ことで成果を目指そう、といった感覚です。

     アナリストやファンドマネジャーはこうした観点から、将来の成長企業を見つけ出そうとして実地調査をして、経済を分析し、業界を分析し、企業(の成長能力と競争力)
    を分析して結論を出そうとしたものです。

     「キャッシュフロー」と聞きますと、今はキャッシュフロー計算書などを思い浮かべるのですが、20年くらい前ですと、アナリスト・ファンドマネジャーは「キャッシュフ
    ロー=税引き利益+年間の減価償却費」という計算式を思い浮かべただろうと思います。

     企業成長に焦点を当てて企業を見る、ということであれば「成長の原資」に注目する必要があるのですが、企業にとって「成長の原資」の中核部分は「税引き利益とと減価
    償却費」ですから、「キャッシュフローが潤沢かどうか?」は決定的に重要なファクターだったからです。

     それから分析の対象として「技術力」や「成長分野への先行投資」ということも重要でした。アナリストやファンドマネジャーが先端技術や企業の成長分野の情報に詳しい
    、というのはごく当たり前のことでした。

     アナリストの役割は「成長企業を見つけ出すこと」、ファンドマネジャーの価値は「成長企業を適切な株価で買うこと」と定義しても、別に異論はなかっただろうと思いま
    す。(上場企業であれば、成長企業の株価も固有の成長性ではなく景気の局面とか市場環境で上げ下げします。成長企業の株式をできるだけ割安な局面で買えば投資成果が上
    がるだろう、という発想です。)

    ○変わってしまったパラダイム
     成長企業への長期投資は大いに報われるだろう、という論理は今も変わっていないでしょう。しかし、成長企業を生み出す「土壌」はすっかり変わってしまっています。原
    因は簡単です。日本経済そのものの成長性がなくなってしまったから、です。

     それに伴って「株式投資のパラダイム」もすっかり変わってしまいました、と書ければ、ある意味話は簡単なのですが、そうでもないところが問題です。昔は成長企業投資
    、今は○○、といった言い方はどう考えてもできないのです。

     昔とは違う成長企業があるから、それを見つけ出せば良いのだ、という考え方もあるのですが、それは言わば「幸運に賭けましょう」と言っているだけ、となる恐れが大き
    いでしょう。

     日本の株式市場の時価総額が1989年末のピークから見て半分以下に減り、その低下が実に20年以上続いていることを見ますと、今の時代の成長企業を見つけ出せば株式投資
    は成功する、というのはパラダイムとしては貧弱すぎるでしょうね。

     株式投資に何を期待するか?によるのですが、「自分の金融資産の中の比較的小額のある部分を投じて将来に向けてその価値の維持、できれば増加を期待し、ある程度の配
    当利回りを同時に期待する。それができるのであれば、その株式は保有し続ける。」

    ○価値の維持保存
     株式市場では「売買自由」ですから、別に長期投資すべき対象などなくても構わない、ということもできます。株主が転々としようと上場している企業にとっては別に問題
    ないのですし、市場に参加する人にとっても長期投資だろうが短期売買だろうが、やりたいことができればそれで十分、と言える筋合いのものだからです。

     しかしながら、ある程度の蓄えがあってそれを投資すると「毎年○○%程度の収入が得られて、インフレなどの経済情勢の変化があっても実質的な価値が低下しないで済む
    。しかも、いつでも現金化可能な投資対象がある」としますと、それは実に重宝な投資対象であるはずです。

     成長段階にあった日本経済にはそういう魅力的な投資対象が数多くありました。銀行の預金、郵便局の貯金でもある程度そうした重宝な性質を持っていました。貸家なども
    そうだったでしょう。

     しかし今、そういうものを見つけるのはきわめて困難な状況になっています。預貯金の金利はほぼゼロです。貸家は家賃の下落とともに賃借人を探すのに苦労するようにな
    っています。それに代わるものとして期待した毎月分配型投信や新興国株式は、円高と経済混乱で期待はずれの結果をもたらしてしまっています。

     上場している株式の中に、「毎年○○%程度の収入が得られて、インフレなどの経済情勢の変化があっても実質的な価値が低下しないで済む。しかも、いつでも現金化可能な投資対象」があれば、それらは実はたいへんな魅力に富む投資対象ということになるでしょう。どんな会社なら長期投資できるのか?という問いに対する適切な回答であり、金融資産の一部を振り向けるべき資産である、ということになるでしょう。

     配当利回りが高く、それなりの事業基盤を持っていて企業に永続性が備わっているだろう、という企業群は実のところ日本の上場企業には数多くあります。

     例えば総合商社株を見ますと、大手であれば配当利回りは優に3%を超えていますし、事業基盤も財務基盤も強固です。こういう株式は長期投資の対象にならないのか?

     先ほど、株式投資のパラダイムが変わったと思うのは難しいと書いたのですが、具体的にはまさにこういう例を見ているからです。

     このコラムで総合商社株、特に三菱商事については継続して何回もコメントして来ています。売買の対象として十分な魅力を備えており、ひょっとすると「バブル化するかもしれない」として注目して来たからです。(実際、2007年~2008年初夏にはバブル化「しかかり」ました。)

     売買対象としてバブル化するかもしれないという素質があるのだから、(今回これまで書いたような意味で)投資魅力があるのか、と言いますと残念ながらそうでもありません。何かが欠けている、というのが私の考えです。

     その「欠けている何か」がまさに、どんな会社なら長期投資できるのか?という問いの答えであるべきものなのです。

     答えは成長性ではありません。

     この問いと答えについては、今後も折に触れて書いて行きたいと思っています。答え(の表現)が非常に難しい、と私は感じるのですが、今回は、「株主の財産である株式の価値を維持・増殖し、年々の利回り(つまり配当))確保について全幅の信頼を寄せても良いと考える根拠を経営陣(とりわけ経営トップ)が株主に示し得ているかどうか?」ということ、と書けば、理解できるものとなるかもしれません。

     こうした観点は別に私だけが持っているものではなくて、例えば、現在上場企業は毎年「コーポレートガバナンスの基本方針」について取引所に書面を提出し、投資家に開示することを求められています。株主の利益を増進するためにどんな企業統治をするか?ということを毎年開示しているのです。

     しかしながら、その開示を見ますと、多くは会社の中のどこかのセクションで社員が適当に書いた、という程度のおざなりのものがほとんどで、株主の利益を経営トップが考えた末の文章になっているとはとうてい思えないものがほとんどです。

     仮に株主重視を書いたとしましても、その会社が無配で、財務基盤も弱く、成長の実績もない、となれば、文書は虚しい形式的書面を飾るだけのものです。

     それに、例えば財務内容にしましても、株主の信頼を得る財務内容は何か?と聞いた場合、その企業の成長段階や経済情勢によってまったく違ったものになります。こういう財務内容なら株主の信頼を請うことができるという決まった内容はないのです。

     ただ、例えば今現在、ということで考えますと、自己資本比率が50%以上あり、ROEが20%レベルに向上する素質があり、有配で、現預金を自己資本の額と同額あるいはそれ以上保有している、といった会社で、そこそこの成長余力があれば、その経営トップが企業統治について確固たる方針を述べるのであれば、株主として信頼しても良いだろうと私は思っています。(つまり長期投資できる、ということです。)
    コメント2件を表示する 2011/12/04 01:00

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