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  • サークル名:原風景を歩く(O.C.)



    ■花背峠を越えて
    洛北から鞍馬川沿いに鞍馬街道を北上すると、道は杉林の中の九十九折れの急坂を登りはじめる。昨夜降った雪の白と北山杉の幹の黒が、コントラストの強いモノトーンの姿を描いている。雪のやわらかな膨らみは雪の冷たさを忘れさせ、北山杉の凛とした立ち姿は冬の北山の厳しさを感じさせる。すべての音はやわらかな雪に吸い込まれ、物音ひとつ聞こえない。そんな静けさを破るように、枝に積もった雪が、バッサーという音とともに落ち、小さな雪煙をあげている。

    四十数年前のある雪の日、雪の北山杉の写真を撮ろうと友人と二人で鞍馬駅からこの雪の林を逍遥したことがあった。その日も今日と同様、雪の降った翌日であり、長靴でやってきた彼は、足が冷たくてたまらなくなって悲鳴を上げ、跳び上がりながら、雪中を歩いていた。その姿におもわず大笑いしたことを思い出した。彼は当時高価だった一眼レフカメラをもって撮影していた。その時に撮ったモノトーンの写真パネルが、確か今も押入れに残っているはずである。「わが青春のアルカディア」のひとこまである。

    そしていま、四十数年ぶりに同じ道を登っている。
    ようやく花背峠にたどり着くと、ここから道は花背別所に下る道と、杉峠に向かう尾根道に分かれる。昔と変わらない峠である。尾根道には、最近誰が歩いたらしく、雪の中に足跡が残っているが、やがて杉林の中に消えてゆく。いったいこの雪の尾根道をどこに向かったのだろう。
    この花背峠ができる以前には、旧花背峠を越える道があったが、今は雪がなければ暗い杉木立に挟まれた坂道を越える人影もない。
    峠を越えると、鞍馬街道は、再び背の高い北山杉の間につづく九十九折れの道を、花背別所の村へと下ってゆく。坂道から見下ろす村の様子は、昔とさほど変わっていない。しかし民家の屋根に積もった雪の下は、昔の茅葺屋根はほとんどなく、トタンに葺き替えられている。それでも昨夜の雪はトタン屋根を覆い、茅葺屋根のふくよかさを再現している。
    昔、この村に下ったときに、峠を越える行商人のための「小谷屋」という旅籠があった。もの忘れやすくなった今でも、どういうわけか「小谷屋」の名前を憶えている。そして今は・・・残っていた。雪に埋もれてはいるが、看板が立っており、今も営業しているらしい。近くでは工芸品を創って販売している店ができたり、茅葺民家を蕎麦屋に改装した店ができてはいるが、依然として雪の中にゆったりとした時間が流れている。
    鞍馬海道の花背峠に代わるトンネルができているわけでもなく、京都から日本海へ抜ける道として利用されることも少なく、冬には花背峠は雪に閉ざされることもある。峠道は単なる通過点としての峠ではなく、この地域に住む人たちのための道であり、今となっては山の文化を守っているといえるかもしれない。

    ■大堰川源流へ
    花背峠は賀茂川水系と、大堰川水系の分水嶺兎であり、賀茂川水系の鞍馬寺あたりの森影には京文化が色濃く染み渡っているが、峠の北には丹波山中の佇まいが色濃く残っている。
    小さな流れが杉林の中を北に向かって下り、やがて広河原から南に向かって下ってきた流れと合流する。近くの杉の陰に小さな鳥居の前に立つと、かつて広河原からの帰りにその傍らの石に腰を掛けて休んだ記憶がふとよみがえってくる。神社はたしか小布施神社と呼んでいただろうか。記憶とは不思議なものである。数十年前のある日のある場所の何でもない出来事が、その場所に立った時によみがえってくる。
    川沿いの道には杉、山裾にも杉、山肌にも杉・・・水辺の雪と杉が 山肌の雪と杉が大井川流域の風景を作っている。まっすぐに天を指す黒い杉と丸味を帯びたやわらかな白い雪が大井川流域特有の風景を生み、川沿いにときおり姿を見せる民家が、雪中のアクセントである。
    京都北山は繊細な杉林と千とも言われる峠道と、細く繊細な渓谷からなっている。その峠道や杉林や谷をさらに美しくしているのが、このえある。新緑や夏の北山風景もいいが、、冬の風景が捨てがたい。

    このあたりの文化は、周山や山国などを経て、大堰川ぞいにさかのぼってきたのだろうか。北山の文化は川沿いに遡り、ときには峠を越えて別の文化圏に侵入し、争い、交流し、混じりあっていった。

    ■ 佐々里峠の向こう
    大堰川源流の広河原からさらに北に向かい、由良川源流に向かう。
    四十数年前、今のように佐々里峠を越える舗装路が整備されていなかった頃、広河原の集落から細い山道を登り、ようやく佐々里峠の石室の前で一休みして再び出発、、佐々里の集落を経て、由良川本流にたどり着いた。ここから川沿いに遡ると、芦生の京都大学農学部演習林入り口に達する。長時間の峠越えの旅だった。
    風景は北山杉の風景から、ブナなどの
    コメントする 2012/01/24 10:58

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