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  • モデレータの目(2012/5/27)

     日本創新党党首山田宏氏(元衆議院議員、前杉並区長)が著書の中で興味深い議論を取り上げています。

     「所得税」、「法人税」、「消費税」の3税の税率を「すべて10%」にすれば、税収が10兆円増える、と言うのです。現状、この三つの税の収入は合計で39兆円ほどで

    すが、それが「10%の単一税率」で49兆円に増える、と主張しています。

    現状の税収は、
    所得税 14兆円
    (税率は5%~40%)
    法人税 15兆円
    (税率は35%)
    消費税 10兆円
    (税率は5%)

     合計で39兆円です。

    これを「すべて10%の税率」にすると税収は、
    所得税 23兆円
    法人税 5兆円
    消費税 21兆円

     合計49兆円、となる、としています。どういうシミュレーションか詳しくは分かりませんが10兆円増える計算になっています。

     保守派の政治家として、「国が高い税金を課して国民の知恵と汗で得た財産を集めることを、是としてはいけません。なぜなら『自分のお金は大事に使い、人のお金は無駄に使われる』のが、残念ながら人の世の常であり、そして『人のお金』の最たるものが税金だからです」と主張するのは当然なのでしょう。

     税率はできるだけ低くし、財産はできるだけ稼いだ人の手元に多く残すようにして、その人の自由な選択によって使われるようにする。その方が社会にとって有効な使われ方になる。減税こそ社会にとって善であり、減税こそ最大の規制緩和だ、とも。

     10%の単一税制が現実的かどうか分からないのですが(と言うより、どう見ても非現実的でしょう)、税率を10%に揃えることでむしろ税収が増える、というのは示唆に富む話です。

     上記の計算を見て明らかなのですが、10兆円の純増の「出入り」は次のようになっています。

    所得税は「9兆円の増収(=増税)」
    法人税は「10兆円の減収(=減税)」
    消費税は「11兆円の増収(=増税)」

     つまり、「所得税については、10%にすることによって、従前は所得税を収めていなかった、あるいはほとんど収めていなかった人たち(所得の比較的低い人たち)に対して増税するので9兆円増収」となり、「法人税については、10%の税率に減税するので大幅減収(減税)となるが、それによって企業活動が活発になるだろうから、トータルでは日本経済にとって大きなプラス」、であり、「消費税は現在の5%を10%に引き上げるので11兆円の大幅増収(増税)」ということです。

     こう見れば、そんなに論理が飛躍した主張ではない、ということが分かります。

     三つの税のうち、消費税の10%への税率引き上げについては、今現在国会で論議されていることであり、10%への引き上げは時間の問題でしょう。結論はすでに出ている、ということになります。

     残る二つ、所得税と法人税については、山田創新党党首の主張に対しては、そうとうな反論・異論が出て来るに違いありません。

     所得税を単一税率10%にする、というのはかなり荒唐無稽の主張、と言われるだろうなと思います。所得税には国家の経費をまかなうための資金を得る、という目的の外に「所得の再配分」という機能も期待する、というのが(おそらく)常識になっている、と思われるからです。

     そんなことは承知の上で山田氏は「保守政治家として」この税率について語っているものと想像されます。(本音は、本来なら所得税を納めるべきであるのに、何らかの原因で所得税を払わないで済むようになっている「多くの国民」にも所得税を支払ってもらう制度への変更をすべきだ、という意味かもしれませんが。)

     個人の所得税率を10%にしたとして、所得の多い人は大いに喜んで、日本という国に留まろうとするかもしれませんが、所得の低い人が持つ不満や不公平感、あるいは重税感を国民の多くに納得させることが可能とは、とても私には思えません。

     所得税率が高ければ、金持ちが国外に去ってしまう、という恐れは強くなるのですが、だからと言ってさすがに所得税の機能の一つである「所得の再配分機能」をまったく無視した所得税のあり方を採用するのは無理だろう、という気がしますね。

     資本主義経済を取り入れている社会においては「所得の高い個人」は会社や事業の「オーナーや株主」である可能性が強いでしょう。とすれば、以下に示すように、法人税率を下げることで「金持ちの国外逃亡」を防ぐ方がやり方としてはスマート、という気がします。

     法人税については、大幅減税することに私も大賛成ですね。すでに多くの国で法人税を15%とか20%に下げる例が出ています。どの国も優良な企業を国内に留めることで雇用増や経済活動の活発化、経常収支の黒字を得ようと躍起になっていますから、法人税率の引き下げは競争のようになっています。日本が後れを取るのは問題です。

     山田氏の論はほんとうに示唆に富むのですが、私の感じとすれば、消費税の10%への引き上げは賛成、しかし、10%に引き上げたらもうそれ以上の引き上げは(原則)断固反対、法人税の引き下げは大賛成、ただし、10%に下げる必要はなく、他国の税率を見ながら15%とか20%の着地で良いのではないか、というところ。

     所得税については、より多くの国民に所得税を負担してもらうような制度に変えると同時に、累進性は今より強化して、高額所得の人たちにはより大きな税率での負担をお願いする(アメリカ流に言えば、バフェット・ルールの採用)といったところが座りの良い制度となるのではないかという気がします。

     いずれにしましても、日本の財政の健全化と福祉の充実(セーフティネットの拡充)を同時に達成してもらう、というのが目標(まさに一体改革)でしょうから、政治家の皆さんには大いに知恵を絞ってもらいたいものです。
    コメントする 2012/05/27 18:33

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