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  • 会社の社長とファンドマネジャー

     仕事の関係で日本監査役協会の会員となっていまして、今年の年次総会にも参加したのですが、その総会でのパネルディスカッションであるパネリストが「日本と英米では会社に関する見方がかなり違っている。信託の伝統のある英国、それを継承している米国では、会社は信託財産という見方がされる。したがって会社の経営陣は信託財産の受託者(管理人)、という風に見られて管理人としてふさわしい仕事が要求される」という趣旨の発言をしていて印象に残りました。(と言うより、目からうろこが落ちるくらいのインパクトでした。)

     わが国では会社の経営陣(役員)は会社と委任の関係にあり、役員は善良な管理者としての注意義務があり、取締役はそれに加えて会社の利益と個人の利益の関係においては会社の利益を優先するという忠実義務が課せられている、となっています。

     しかし、会社(の財産)は信託財産(のようなもの)であり、会社の経営陣は信託財産の管理人という位置付け、だということになりますと、会社の経営陣に求められるのは、受託者として「株主(=会社という信託財産の委託者)の意を最大限汲んで会社を経営すること」ということになります。委託者の最大の関心事は、受益者(この場合は=委託者)に利益をもたらすことでしょう。(つまり、会社の経営陣は「受託者責任を負う立場」というわけです。)

     信託、と言いますと身近に思い浮かべるものに投資信託があります。日本の投資信託(契約型)では、委託者は投資信託委託会社で投信というファンドの運用を指図します。受託者は信託銀行で投信としう信託財産を管理します。受益者は、その投信を購入した投資家、という構図です。

     形はそうなのですが、実際上は、「委託者兼受益者=投資者」、「受託者=投信委託会社と信託銀行」と見る方が適切であろうと思います。つまり、投信のファンドマネジャーは「受託者責任を負う者」である、というのがふつうの理解です。

     で、もし、冒頭のパネリストのような見方、会社は信託財産、という見方、をするとしますと、「会社の経営者とファンドマネジャーは同じ(ような)責任を負っている者同士」ということになります。(この点が目からうろこだったのですが。)

     同じような責任、とは、「会社の株主に利益をもたらすこと」と「投信の投資家に利益をもたらすこと」、というわけです。

     日本の会社の経営トップは、総じて(おそらく)株主の利益にはあまり関心を持たない、という風に見えます。ひょっとすると、こうした考えは、日本の会社観と英米流の会社観が違うことから来ている部分が多いのかも知れない、そんなことを考えたものでした。

     どちらが正しいとか間違っているとかいった問題ではないのですが、会社の経営効率や競争力といった観点からして、会社とは何かについての基本認識が影響を及ぼすとすれば、どちらでも良いという問題ではありません。

     会社は誰のものか、といった議論が盛んなことがあって、けっこう不毛な議論が展開されたように思えるのですが、会社は株主のもの、したがって会社の経営者は株主の利益を最重視すべし、といった議論が通る見込みのないわが国で、もし「会社は信託財産のようなもの」であって、「会社の経営陣はファンドマネジャーのような立場にある」という認識が受け入れられるなら、少しは別の雰囲気が出て来るのかもしれない、と、そんなことを思ったものでした。
    コメントする 2012/07/08 16:45

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