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  • 投資家はどんな経営(者)を望むのか
    モデレータの目(2012/10/28)

     株式投資の目的は単一ではありません。会社を支配するために株式を保有するというのはよくあることですし、株主優待が投資の動機となる、などということもあります。単にその会社に興味がある、とか応援したいので、といった目的で株式投資をすることもあると思います。

     しかしながら、株式投資の目的で一番ふつうのもの、と言えば、これはやはり「儲けるため」となるでしょう。儲けるため(リターンを得るため)に損失の恐れ(リスク)をとる、というのが一番ふつうの株式投資の姿です。

     で、株式投資(長期投資、短期のトレーディング、裁定取引などを含むことにします)で儲けるためにはどうなれば良いのか、と考えますと、これもざっくりと単純化してしまいますと、次のふたつということになろうかと思います。(単純化のために、以下において株式は「上場株式」に限る、とします。)

    1)投資先の会社が利益を増やし、配当を増やし、企業価値を向上させることで株価を上げる、ということを達成した結果として儲ける(儲かる)。

    2)株式が上場していれば、毎立会日に株価がつき、変動します。先行きの変動を「予想して」、安く買って高く売る、または、高いところで空売りして安くなった時に買い戻す、とやれば儲かる。

     1)を「投資」、2)を「トレーディング」、と呼ぶことにします。2)は投機と呼んでも良いでしょう。株式で儲けるには、「投資で成功するか」、「トレーディング(投機)で成功するか」、どちらかでうまくやれば良い、ということになります。(同時にあるいは引き続いて両方、ということもあります。)

     2)のトレーディング(投機)はとりあえず置くとしまして、以下で1)の投資(株式投資)について考えます。

     (実は、株式の市場価格、ということを考えますと、株価の位置(=割高か、割安か、といったこと)が会社の利益以外にきわめて重要なのですが、とりあえずここではそれは無視します。)

     株式投資では、投資先の会社の「利益が増えれば成功の確率が高い」ことになります。そこで、会社の利益はどうすれば増えるのかを考えてみます。

     会社の利益(例えば営業利益)は、売上×利益率、ですから、売上が増えるか利益率が向上するか、またはその両方、が達成できれば、利益は成長します。

     要するに利益さえ増えれば良いわけですが、その際に、「売上成長」に焦点を当てるか、「利益率」に焦点を当てるか?によって考え方が大いに違って来ます。

     国の経済が成長し、その会社が属する業界が成長し、その業界においてその会社はトップだ、ということであれば、その会社の利益は売上成長を上回るペースで増えて行きます。1980年代までの日本はおおむねそんな感じだったと言えるでしょう。(もちろん今でも個別企業レベルで見れば、こうしたロジックが当てはまる会社はいくつもありますが。)

     こうした状況下では、株式投資における着眼点は、「売上成長(新製品とか新規分野で達成されることが多い)」、「積極的な設備投資」、「業界における競争力」、などとなるでしょう。

     他方、国の経済があまり成長せず(すでに成熟したという状況)、業界と言っても海外に出てグローバルな競争が必要となりますと、会社は売上の伸びよりも利益率に目を向けざるを得なくなります。無謀な設備投資をすれば利益を失って倒産の危機に瀕する恐れもあります。(シャープが典型的な例です。)

     そうした状況でも、最終的に利益を増やしてくれる会社でなければ投資対象としてふさわしくないわけですから、そういう会社(投資対象としての銘柄)を選ぶにはどうすれば良いのか?どういう視点で選択をすれば良いのか?を考えなければなりません。

     経済が成長期なら、積極経営とか多角化、とか新製品開発力、などが重要(な経営の能力)だったわけですが、成熟経済ということならどうか?となるわけです。この答えも単純化するとふたつあると思います。

    1)それでも成長する分野を見つけ出してそこで戦う。

    2)今ある事業の効率(利益率)を高め、(買収などで)その事業で圧倒的な業界シェアを獲得する。(そして自社製品の価格を引き上げる。)

     どちらでも良いわけですが、やりやすさという点からすれば2)が有力でしょう。

     こうしたことを実際の経営の中で実現できるような「経営力」を持った経営トップ、経営陣、事業組織、となっているかどうか?おそらくこうした観点で会社(株式投資の対象としての銘柄)を選ぶのがよかろう、こんな風になるのではないかと思います。

     こうした観点からの「銘柄選択」がどんなものであるべきか?実のところ確たる手法があるわけではありません。(ここまで読んでいただいたのに申し訳ないのですが。)いずれにしても、困難な経済情勢の中でしっかり利益を上げ、利益を成長させる経営力を持った会社の株をうまく選択して投資することにしましょう、と言うことになるのですが、実際の投資行動の指針として何を使えば良いのか?は何とも難しいところです。

     そこで、私が今作業仮説的に考えていることを書いてみたいと思います。

     それは、「コーポレートガバナンスに着目して銘柄選択を実行する」というものです。

     つまり、投資先候補の「コーポレートガバナンス」を検討して銘柄の採否を決めましょう、ということです。

     コーポレートガバナンスが優れていれば、その会社の経営陣は利益を増やし結果として株主に利益をもたらす確率が高かろう、と考えることにする、というわけです。

     では、「コーポレートガバナンスの優れた会社をどう見つけるか?」ということになりますが、これについては、次のようにふたつにまとめます。

    1)その会社の経営トップ(経営陣)が株主の利益を最重要視しているかどうか?つまり、コーポレートガバナンスの「目的」を株主利益の向上に置いているかどうか?

    2)「一般株主」を重視する経営をするつもりかどうか?個人投資家はいわゆる「一般株主」の典型的なものですが、会社がコーポレートガバナンスにおいて一般株主の利益を尊重するとしているかどうか?

     まずはこういうことにしまして、次にこうした観点からして投資対象として優先すべき優れたコーポレートガバナンスの会社の選択基準は何か?と考えてみます。

     私見によるこの基準は以下の7つです。

    1)その会社の経営陣は、「株主(=シェアホルダー)」と「利害関係者(=ステークホルダー)を分けて考えているかどうか?

    2)株主(投資家)の利益の極大化、成長を経営の目標としているかどうか?

    3)利害関係者(ステークホルダー)に対する配慮が納得できるものかどうか?

    4)経営陣の報酬について額の算定や支給についての明確な方針を示しているかどうか?

    5)一般株主の利益を尊重することを明確に表明しているかどうか?

    6)会社の利益成長目標、利益目標、配当方針などを明確に説明しているかどうか?

    7)上記のことがらが「株主総会の招集通知」に記載しているかどうか?(招集通知だけで足りることが望ましいのですが、補完的に、「上場会社が取引所に提出しているコーポレートガバナンス報告書」、「有価証券報告書」、「各社のウェブサイト」、「各種の報道記事」などを参考にするべきであることも多いかもしれません。)

     この基準を採用するとしますと、「株式投資における銘柄選択の手法は以下のようになるでしょう。

    1)株主総会の招集通知を読んで「この銘柄なら投資しても良いな」と思える銘柄を選ぶ。

    2)その銘柄の株価ができるだけ割安な局面に投資する(買う)。

     とまあ、文章で書けばそれなりにしっかりしているように見えるのですが、実際に私もチェックシートを作成して検討しているのですが、作業は困難を極めます。

     まず、上記のチャック項目に関連する事柄が7)を満たすことがほとんどありません。招集通知だけをいくら読んでもさっぱり要領を得ない会社がほとんどです。

     次に、その会社についていろいろ読んで情報収集しようとしても、それぞれの書面で内容や表現がばらばらで極めて分かりにくい、ということがあります。

     とはいえ、ある程度の時間をかけて判断する、という以外に方策はないわけですが、上記のチェックポイントに関して、私は個人的には○×を以下の基準で付けることにしています。

    1)その会社の経営陣は、「株主(=シェアホルダー)」と「利害関係者(=ステークホルダー)を分けて考えているかどうか?
    「経営者の権限が株主から与えられている」といった表現があればまず合格、ですが、そういう表現はまれです。「株主を始め、ステークホルダー云々・・」といった表現があればOKでしょう。要するに、株主をステークホルダーの中に一緒くたにしている会社(経営の考え方)には警戒する、という趣旨です。

    2)株主(投資家)の利益の極大化、成長を経営の目標としているかどうか?
    これも明快な表現に出会うことが少ないのですが、「株主共同の利益の増進・・、とか「企業価値の継続的な向上・・」といった表現があればOKとしています。この点は、多くの上場企業が表明しています。

    3)利害関係者(ステークホルダー)に対する配慮が納得できるものかどうか?
    株主の利益のためには、ステークホルダーとの関係を良好に保つ必要がある、という趣旨のことが書いてあればOKです。この点も、多くの企業できちんと表明しています。

    4)経営陣の報酬について額の算定や支給についての明確な方針を示しているかどうか?
    これは、明快な記述に出会うことが少ない項目ですね。書き方が難しいということもあるのですが、基本報酬の決め方、と成果報酬について、大雑把な額が想像できる程度には書いてないと不合格としています。

    5)一般株主の利益を尊重することを明確に表明しているかどうか?
    主に、独立役員に関してどう対応しているか?ということになるのですが、こういう人を独立役員としています、ということ以上に、「独立役員には一般株主の利益の観点から経営への監視・監督をお願いしている」といった記述を期待しています。ただ、そのように書いてあることはまれですね。

    6)会社の利益成長目標、利益目標、配当方針などを明確に説明しているかどうか?
    これは、実のところ招集通知やコーポレートガバナンス報告書には書きにくい事柄でもあるのですが、経営トップのコメントに書くとか、取締役報酬の収益連動部分との関連で書く、とか、配当方針のところに書く、とか、工夫の余地はあるでしょうから、そういう記述があるかどうかのチェックです。納得の行く成長戦略があればOKです。

    7)上記のことがらが「株主総会の招集通知」に記載しているかどうか?
    実際に招集通知を読むと分かるのですが、招集通知の情報価値は本当に各社バラバラ、です。きちんとしたものもあれば、とにかく法律上の形式を満たせば良い、と考えているとしか思えないものもあります。世間で一流企業と言われている会社、リベラルな創業者の会社、はけっこうしっかりしていますね。それから、意外にも地銀の中に読む価値のある招集通知がある、というのは面白いところです。

     こうしたチェックを実施して、さて、どんな銘柄なら投資(の候補)にできるか?となるわけですが、縷々書いて来ましたように、この銘柄なら合格、というものが何とも少ない(納得が行く会社が少ない)というのが現状です。

     トラスコ中山はしっかりしているかな、とか、日立は苦境をくぐってからずいぶん変わったな、とか、ソフトバンクは大丈夫だろう、とか、エーザイはそれなりにちゃんとしているな、とか、この銘柄は外人持ち株比率が高いからそのプレッシャーでけっこう株主利益を考えているのだろうな、とか、そんなふうに思うことは多いのですが、(投資の結果はともかくとして)この銘柄なら「投資は納得」と思える会社は少ないですね。

     投資、投資、と書いて来ましたが、「11月に買って5月に売る」などと、典型的なトレーディング、しかも、それを個別銘柄でやると良いのでは、などと書いて来ている身としましては、さして候補も出て来ないような投資銘柄選択がどれくらい意味があるのか分からないところもあります。

     しかし、株式市場の状態がこれだけひどいことを考えますと、逆に言えば今後株主利益をしっかり向上させる経営を実現できる会社(の株)であれば、大きな投資価値がある、とも言えるのではないか、という気もします。しばらくの間は、今回書いたような「コーポレートガバナンスに注目した銘柄選択」作業を続けてみようと思っています。
    コメントする 2012/10/28 13:58

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