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  • サークル名:原風景を歩く(O.C.)








    八雲たつ出雲
    「これは、最近のものでね」

    奥出雲の山中を抜け、のびやかな野に出ると、そこは豊穣と神さびた雰囲気を併せ持つ古代文化発祥の地、出雲の国です。土地の概要を知りたいと資料館を訪ねると、たまたま館内にいた七十歳前後の男性が声をかけてきました。
    「どちらから。専門家ではありませんが、説明しましょうか」と、館内を案内してくれます。説明の中で、展示物を示しながら、「これは最近のものでね」とか、「この間、山を削ったときに・・・・・」という話が出てきます。この人にとって、「最近」とは平安時代のことであり、「この間」とは江戸時代のことのようです。この出雲では、「出雲の神々の時代」から、以降の平安時代や江戸時代の歴史は吹っ飛ばして、現在に至るようです。古代と現在だけがあり、平安貴族社会や武家社会には何の興味も価値も見出さない風です。

    「まだ時間がありますか」
    「ええ、特に今日の予定はありません」
    「では外を案内しましょう」と、今度は古墳や神社を案内してくれるようです。
    「ここが出雲国庁舎跡、あれが茶臼山。その麓が真名井神社。その先が武内神社。地元では『武内っあん』と呼んでます。ほら、反対側の山、あの山は古墳群ですよ。あの山の切り通しのようなところ、この間、上流で洪水があったので、山を切り取って川をつけ、水をこちらに流したんですよ」
    例の「この間」がここでも口に出ます。
    話の内容からすると、やはり江戸時代のようです。出雲の神代からすると、江戸時代はほんの「この間」でしかないのです。

    たまたま出会っただけの私に、「古代出雲を伝えたい」という思いで話しかけてきた人。そして神社で出会った旅の女学生に、「今度来るときには、古事記を読んでから来るんだよ」とお説教。
    おせっかいでお国自慢。ともすれば、グローバルとか国際化という風潮の中で、長年住み慣れた出雲の歴史に愛着を持ち続けている人がいます。
    この人の顔も忘れてしまいましたが、「最近」とか「この間」というなんでもない言葉だけが、八雲立つ出雲の国の悠久の時間や神さびた風景と交わって、耳に残っています。

    コメント8件を表示する 2012/11/06 17:34

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