川柳講座
講師:大木俊秀大木俊秀
川柳講座 大木俊秀

 初級の方でも気軽に参加できる楽しい川柳講座です。日常のあれこれ、人の世のことを、優しく、鋭く詠んでみませんか? 毎月、投稿作品の中から優秀作品を選出し、講師による講評を発表します。是非、皆さんの川柳作りにお役立て下さい。

6月の講評 「 半 」

2009年6月1日~2009年6月30日受付分

特選

半眼に心の奥を覗かれる
藍子

 「半眼」に対する語は「正眼」でしょうか。正眼で見据えられても恐いですが、半眼はなにかもっと不気味な感じがします。精神がより強く研ぎ澄まされるような印象があるからでしょうか。「半」の題詠で異色作と拝見しました。

秀作

不機嫌が半歩下がってついてくる
めばる

 半歩下がってついてくるのは奥さんでしょうか。恋人でしょうか。あるいはお子さんか。機嫌をとりなおして並んで歩いておくれよ。

半値まで下げて売り手も意地となる
白鷺太郎

 よく、叩き売りなどで見られる風景ですね。「意地となる」は、もうこれ以下には下げないのか。それとも「ただで持ってけ」なのか。

微笑んで片棒担ぐ覚悟する
みすず

 「半」を直接作品の中に入れないで、「片棒」で表出したところが達者。微笑みを浮かべるくらいですから、仲の良い、信頼できる相棒なのでしょう。

半分で良いと言いつつ全部食べ
あじさいの花

 「半分で良い」ということばをまともに受けないでよかった。てんこ盛りにしてやったらペロリとたいらげた。遠慮してたのね。

半分は貴方のものと妻はいい
風蘭

 ということは、「半分は私のものよ」が妻の主張、要望。夫は全部自分のものと思っていた。「ベターハーフ」だから仕方ないか。

割り勘の下戸のつまみも侮れぬ
公望

 飲めない分、食べるものをどんどんやってくれと勧めたが、これが大誤算。彼は高価なものばかりパクパク。こっちの割り勘負けだ。

枇杷の実は半分以上種が占め
あじさいの花

 なるほど、そう言われてみると、枇杷は他の果実に比べて、種が相当な割合を占めます。俳句では、枇杷をこのようには詠まないでしょう。川柳らしい仕立て。

佳作

吊り橋の半ば進むか戻ろうか
みすず
無になって半紙へ墨を走らせる
勲生
半音階ずれて微妙に仲が良い
きみ
折り返す余力残して山登る
びしょう
タレントは半人前を売りにする
JR
半襟の白で着物ひきしまり
藍子
半々に納得させるやじろべえ
彦翁
志半ばで終わる世の倣い
白鷺太郎
あれもやり此もやったが皆半端
シユーター
半纏を着ていた親の血が混じる
ジャズキチ
毎日を半ドンにしてワークシェア
あじさいの花
半纏がニューファッションとなる時代
白鷺太郎
卓袱台を出してたたんで四畳半
きみ
半券が言い争いの種を撒く
びしょう
戯れに三行半を考える
yas3
半径を視野に置いてる孫の守り
勲生
老い二人豆腐半分ずつで足る
みすず
半額で売っても儲けちゃんとある
龍之助
曲作り偉人にもある未完成
damuuru
たい焼きを半分わける難しさ
あじさいの花
母の日に父も含んだペアグラス
公望
半ズボン短い足がよく目立つ
ジャズキチ
後半にきて座り込むサスペンス
きみ
それぞれに鯛の半身の夕餉かな
麦秋
物干しの大半占めていたおむつ
きみ
半袖の腕が眩しい衣替え
kanko
現役の半分以下で済む食費
damuuru
半分の支持で成り立つ民主主義
白鷺太郎
半分こ分ける母見る子供の目
猿嘘
足半ば棺に入れてもなお策士
ハーシー

選後雑感

 お暑うございます。ひき続き熱心なご投句をたまわり、ありがとうございました。全体的に見た感じは、「平年作の出来」でした。

 ご投句の中からいくつかを取り上げて少し書かせていただきます。

 「ジャンと鳴る江戸の火消しの競い合い」は、「半」という題の句としては通用しません。「半鐘」という題であれば、これは相当な佳吟と申し上げることができるのですが、「半」=「反響」ではありませんので残念な作品でした。

 「サラ川の半ばは俗なくすぐり句」。サラ川(サラリーマン川柳)のすべてが、こういう作品とは思いませんが、「俗なくすぐり句」とは、よくぞ言ってくださったと、私の胸の透く思いでした。しかし、この句は、「川柳に関すること」を材料としていますので、「楽屋落ちの句」とされ、「楽屋吟」と呼ばれて、避けたい作法の一つとなっています。ずっと以前、川柳関係の出版社から10句近作を出すように依頼されたとき、私はタイトルを「あえて楽屋吟」として提出したことがあります。「いい句なら妻の句だって天に抜き」「全ボツの主幹を弟子が慰める」など、川柳関係を素材にしたものを10句揃えた記憶があります。私の「指五本五七五のためにある」という名句?も、明らかに楽屋吟ですね。ただ、この句は、初心の方を指導する際に多くの先生方に使われているようです。ともかく、「川柳に関わりのある材料で川柳を作らない」ことを、いつも念頭においてください。

 さて、今回の題に限ったことではありませんが、出された題のことばを、まず上五に置く例が非常に多いので、次はそのことに触れます。

 上五のところに、いきなり「半」を持ってきた例は、半べそを、生半可、半角の、半円に、半分に、半分の、半々に、半年が、半径の、半額に、半値まで、半島に、半纏を、半落ちと、半端でも、半歩でも、半袖の、半身浴、半畳も、半紙にも、半熟の……このへんでやめておきますが、実に全体の43%にあたる句が、上五部分に「半」のつく語を置いているのです。

 こういう作り方も、当然あっていいわけですが、仮に10句提出されるとしたら、半分くらいにとどめて、残りの5句は「半」を中七、または下五に落として一句を仕立てるという工夫をしてくださいませんか。「半」を上五に入れて一句をスタートさせるのはとてもたやすく、いくらでも句はできるのですが、句姿や句の中味がどうしても単調な、同傾向のものができあがりがちです。「半」を、中七や下五に落とすとなると、これには相当な「練り」が必要となります。

 このように申し上げると、主題となることばをどの位置に持ってくるかが最大の重要課題と受け取られるかもしれませんが、そうではありません。「半」という題で「何を読むか」「何をうたうか」が何よりも大事なわけで、それが決まってからの、ことばの選択と位置の決定という順序になります。誤解のないようにしてください。

 そういう意味では、
 ・不機嫌が半歩下がってついてくる (めばる)
 ・微笑んで片棒担ぐ覚悟する (みすず)
 ・枇杷の実は半分以上種が占め (あじさいの花)
 ・吊り橋の半ば進むか戻ろうか (みすず)
 ・無になって半紙へ墨を走らせる (勲生)
などの作品が好ましいと考えております。

 平成15年6月の、NHKラジオ第1放送の「文芸選評・川柳」の時間で「半分」という題を出したことがあります。入選20句の最初に紹介した句が「兄ちゃんが全部をくれた半分こ」だったことを覚えています。句の内容といい、「半分」ということばの位置といい、すばらしい句だったと思います。ご参考になさってください。

 「選後雑感」が長くなりましたので、「添削コーナー」は今回はお休みとさせていただきます。ご了承ください。

8月の課題

 8月の課題は「 七 」です。
 詳しくは8月1日掲載の課題発表ページにてお知らせいたします。

▼ 川柳楽習をもう一歩進めたい方のための講座
NHK学園 通信講座 川柳

他にも投稿楽習の記事があります。こちらもぜひご覧ください。

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