野口智子の ゆとりある記 「炭火であぶられるカレイ(新潟県加茂市商店街の魚屋で)」(撮影=金井紀光)

第8回

杉玉道場

写真=「炭火であぶられるカレイ(新潟県加茂市商店街の魚屋で)」(撮影=金井紀光)
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 造り酒屋さんに新酒ができると、店の前に緑鮮やかな「杉玉」がぶら下がります。日本独特の美しい伝統文化であり、商店におけるサインでもあります。この、杉玉をまちづくりに使っているところがありました。
 鳥取県智頭町(ちずちょう)、うかがうまで実のところこの町を私は知りませんでした。「山の中の、消え入りそうなまちかしら……」と思っていたことを反省! 駅前には、古い木造の雰囲気を出した立派な観光協会があります。
 その昔は林業でそうとう栄えていたそうで、山で財を成した方の豪邸が観光名所として公開もされています。白壁や、古い建物が続く街並みは、山間に忽然と現れた商都の風情で観光客の姿もありました。

 観光バスの駐車場で目を引いたのが「杉玉道場」の文字。何?何?とのぞきこむと、女性二人と男性一人、黙々と作業中です。作っているのは杉玉、清冽な杉の香りが部屋に満ちています。  男性が作っていたのは、太い針金を球状に巻いた、杉玉の芯になる部分。女性の一人は、杉の枝から、葉っぱ、穂の部分だけをていねいにはずし、積んでいます。もうお一人は、木の棒のようなものを使って、かなり力を入れながら針金の芯に杉の穂を少しずつつめています。

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「きゃ~、こうやって杉玉、つくるんですんねえ!見るの初めて」と感心していると、もう一人の男性が「ほらこれが完成品」と見せてくれました。ツルリと丸くカットされ、巨大なマリモ状態の杉玉の上には、杉板で屋根もついて吊るせるようにできています。
「なるべく長い穂をギューギューにね、たくさんつめてから刈り込まないと、こんなにきれいにならないの」と女性が教えてくれました。「道場」とは本当で、作りたい人はここに通って教わることができます。 「まあ、3日はかかるね」とのことですが、こんなまちに泊り込んで、杉玉作りも、スローでいいなあと思います。だいいち、クリスマスツリーや門松より、我が家に手製の杉玉なんてかっこいいですよね。

 このまちでは、杉の豊富な林業の町の象徴として、この杉玉を普通のおうちにも皆、軒先にかけています。なかにはフクロウ形のものや、杉の木の風鈴も。まちなかにには本当の造り酒屋さんもあって、杉玉道場ももう一箇所あると聞きました。
「道場破りとか、黒帯取得とかもあるのかしら……」軒下の杉玉をたどって歩きながら、つい笑ってしまいました。

写真上:名前にびっくり「杉玉道場」。い~い香りです
写真下:右が針金に穂をつめている途中。左がカットしている途中

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ぶらっと!