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村田 裕之さん
(村田アソシエイツ代表)
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「アクティブシニアの時代」を語る

~ひとりひとりが主役の舞台へ~

第1回 日米アクティブシニア事情



 2004年11月。世界最大の高齢者NPO「AARP(旧称全米退職者協会)」がロンドンで開催した国際会議に、唯一の日本人パネリストとして招聘された人物の姿があった。

 その人物とは、村田アソシエイツ代表 村田裕之さん。
 民間企業の新事業開発支援に従事する一方、アクティブシニアビジネス分野の第一人者として日米シニアビジネスに関する講演や新聞・雑誌への執筆多数。
 アメリカのシニアビジネスのフロントランナーで構成されるシンクタンク「The Society」の唯一の日本人メンバーであり、近著(2004年5月発行)『シニアビジネス 「多様性市場」で成功する10の鉄則』(ダイヤモンド社)は産業界のみならず、高齢社会に関わるあらゆる分野の人たちから熱い注目を浴びた。
 バブル崩壊後の日本の産業界を舞台に、10年間で民間企業約500社とともに13の異業種コンソーシアムの運営に関わり、新事業開発を推進して来た実績をもつ村田さんは、6年前から自らのテーマを「高齢社会」に設定。民間企業のシニアビジネス立ち上げに参画する一方、各メディアを舞台に活躍を見せている。この4月から経済産業省所管の財団法人 社会開発研究センターの理事長室長にも就任された。
 3月某日。Slownet編集室は、東京・銀座にある村田さんのオフィスを訪ね、「日本で一番高齢社会に詳しい人物」にお話を伺った。


「アクティブシニア」は多種多様

=村田さんのご著書『シニアビジネス「多様性市場」で成功する10の鉄則』を拝読させていただきました。団塊世代の市場について多くのページが割かれていますね。村田さんはアメリカのシンクタンクにも所属され、AARP(旧称全米退職者協会)とも交流が深いと伺っています。ご著書にも日米の「アクティブシニア」事情の比較がよく出てきますが、まず、アメリカのシニアについてお話しください。


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 私は「日本のシニアはこうだ」「アメリカのシニアはこうだ」「フランスのシニアはこうだ」という「特定のシニア像」というものは「存在しない」と考えています。拙著にも書きましたが、「シニアはこうだ」という「決め付け」はできないんです。一部の広告代理店やコンサルティング会社では「団塊世代は人数が多い」「これからこの世代が定年になって時間が余る」、だから「これからはこの世代が狙い目だ」と、簡単に口にするのですが、実際にそれいう見方をして失敗している企業がたくさんあります。こうした「この世代はこうだ」と決め付ける物の考え方は、実は、高度成長時代の産物なんです。
 高度成長時代はご存知の通り、「モノのない貧しい時代」だったわけです。
 この頃は多くの人の生活水準が似ており、「欲しいものも一緒」「給料も一緒」「住んでいる社宅の広さも一緒」だったわけです。こうした時代は商品を「大量生産」して、「大量流通」させると、「大量消費」される時代でした。だから、あまり面倒なことをしなくても結構うまく商売ができたわけです。
 だから、こうした時代に成功体験をもつ経営者には、今でも「団塊の世代」と聞くと、当時と同じような方法でうまくいくだろう、もっと言えば「うまくいって欲しい、少なくとも自分が会社をやめるまでは」という願望があります(笑)。
 ところが、“現代の”団塊の世代は、人数は他の世代に比べて相変わらず多いのですが、その中身は高度成長時代とは大分変わってきています。一言で言えば、非常に多種多様なライフスタイルをもつ世代なのです。
 ですから、団塊世代向けのコンテンツ・ビジネスというのは特に難しい。「一生懸命あれこれ考えて、苦労してつくっても、誰にも見てもらえない」ことが多いのです。  

=おっしゃるとおりです(笑)。


 基本的に「団塊世代やシニア世代のマーケットはこうだ」、と決め付けが出来ない「多様性のマーケット」だということを念頭におくべきでしょう。したがって、「アメリカのシニアはこうだ」「日本のシニアはこうだ」とは言えないのです。

シニアの行動を決める「5つの要素」


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『シニアビジネス 「多様性市場」で成功する10の鉄則』(ダイヤモンド社)
は、いわゆる「ビジネス書」の範疇を越えて、大きな注目を浴びた。

 拙著で書きましたとおり、この世代の行動を決定する要因は、何かの状態の「変化」であると考えています。それには大きく5つあります。
 1つ目は「加齢による肉体の変化」です。歳を取るとどうしても身体に変化が起きる。ひざが痛くなる、肉が下がる、腹が出る、しわが増えるなどです。
 2つ目は「ご本人のライフステージの変化」です。例えば退職、例えば住宅ローンの完済、女性でしたら子育ての終了ですとか、最近多いのが離婚などです。こういうことがあると可処分所得が変わるとともに生活環境がガラッと変わりますね。
 3番目は「家族のライフステージの変化」です。子どもの進学や結婚、そして出産、あるいは両親の介護、死去などです。
 4番目は「世代特有の嗜好性とその変化」です。団塊世代といえば「ビートルズが好きな人が多い」とか「ベンチャーズが好きな人が多い」とかいわれますが、企業はそればっかり狙うと失敗します。これも重要な要因のひとつですが、これだけでは消費行動は決まらないと認識する必要があります。
 最後の5番目は「時代性の変化」、つまり流行や環境の変化です。私の事務所のあるこの銀座界隈は、昼間は50代の女性ばかりの「奥様通り」です(笑)。この人たちは女性同士のグループで昼間から高級なランチを食べている一方、ご主人の方は、その隣の立ち食いソバ屋で、安いソバを啜っています(笑)。銀座って、実はいろいろある街なんですよ。高いものもあれば、安いものもある。こういう多様な表情をもつところが、銀座の魅力だったのですが、最近は外資系のブランド店ばかりが増えて、画一化してきているのが気になりますが……。
 とにかく、中高年の人のライフスタイルは、みんな「バラバラ」なんですね。まずはこのことを真正面から見つめることから始めることです。
 団塊の世代という大きな画一のグループがあるのではなく、この世代の中に新しい小さなグループがたくさんできているのです。
 このグループの“形成の仕方”をうまく捉えることが、この世代をターゲットにしたビジネスのコツであると、私は考えています。

リインベンティング・リタイアメント
 (Reinventing Retirement)


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 前置きが長くなりましたが、ここでアメリカの事情をお話ししますと、アメリカにはいわゆる「定年退職」はありません。ですが、概ね、60歳から65歳程度が退職期というイメージです。もちろん、先ほどの説明のように人によって違います。
 また「Senior」という英語は、アメリカではあまり使われなくなってきています。「Senior」という英語は、日本語の「シニア」よりも向こうでは「高齢者」に近いニュアンスです。さらに「リタイアメント(Retirement)」という言葉も当該世代には嫌う人が増えています。たとえば「リインベンティング・リタイアメント」という言葉が最近よく聞かれます。これは私が昨年(2004年)の10月にAARP主催の国際会議に招聘されたときの会議のタイトルでもあるんですが、「リインベンティング(Reinventing)」とは「新たに作り直す」という意味です。
 かつてのリタイアメントには、社会から隠居して、悠々自適の生活を過ごす、というイメージが強かったのです。確かに今でもこういう人はそれなりにいますが、これからは、退職後も積極的に社会に関わっていくという姿勢を重視する方向に向かっています。これを「シビック・エンゲイジメント(Civic Engagement)」といいますが、この傾向は日本でも見られると思います。
 しかし、NPOを通じた社会参加活動に限って言えば、その量・質共に圧倒的にアメリカの方が先を行っています。この点では、一般的にアメリカの方がアクティブな人が多いかもしれません。

=なるほど、それでは次回は村田さんも関係が深い、AARP(旧全米退職者協会)などの団体のお話を伺わせてください。



(つづく)

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