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いきいきスローライフインタビュー
山根基世さん

やまね  もとよ

山根 基世 さん

(「ことばの杜」代表、フリーアナウンサー)

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第2回定年後は楽しみながら社会貢献

 連 載 目 次
4月
2日
 2. 定年後は楽しみながら社会貢献
4月 9日
 3. スローワードが世の中を変える
4月16日
 4. 「とどまらない人」でありたい
4月23日

ラッキーなタイミング

 今振り返って思うのですが、「ことばの杜(もり)」を設立できたのは、じつはとてもラッキーなことなんです。去年(2007年)の7月という時期を逃したら発足できませんでした。というのは、今年では、体制ががらりと変わったこともありとても無理でした。

 退職する前2年間、アナウンス室長を務めてきましたが、はじめの1年目は様子を見ながら動いてきた感じです。そして2年目からは自分の思い描く形を進めました。その中で、「ことばの杜」のようなものが必要だなあとつくづく思うようになりました。そこで、後半の1年をかけて「ことばの杜」を準備することになりました。
 NHKの協力を得るために局内の世論をきちんと作らなければなりません。そこで、思い描いているこれからの事業について、関係者や理事の皆さんのところそれぞれに、説明に回りました。私がなぜ「ことばの杜」をやりたいのか、また作る必要があるのかを懇々と説明しました。

 ところが、設立直後に会長から理事まで体制ががらっと変わってしまいました。新体制のもとで改めて準備ということではとても間に合いませんでしたから、設立の動きが1年遅かったら、「ことばの杜」はできなかったかもしれません。
 そういう意味で、とてもラッキーだったと思っています。タイミングってとても大事ですね。

「ことばの杜」設立の理由

=あえて「ことばの杜」という組織をつくったのはなぜですか。

 「ことばの杜」を設立した理由は主にみっつあります。
 ひとつは、お話したように、アナウンサー室長時代から取り組んできた、子どもへのこどば教育を、今度はNHKの外から支えてみたいということです。

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▲朗読会の模様は「ことばの杜」ホームページでみることができる

 ふたつには、団塊世代を含め、エグゼクティブ・アナウンサーとして高い評価を受けている人たちが、NHKではこれから続々と定年を迎えます。
 せっかくNHKで切磋琢磨して活躍して、力を蓄えてきた人たちが、定年を迎えたからといってバラバラになるのはもったいない。せっかく三十数年間NHKでアナウンサーとして活躍してきた人たちですから、定年後も互いに結びついて力を活かしていける道がないものか。ということで、定年後の受け皿を作りたかった。

 もうひとつ付け加えれば、ただのボランティア活動ではなく、培ってきた専門性を活かすことによって、多少でも収入を得る。定年後の小遣い程度かもしれませんが、これも大事なことだと思います。

新しい定年後のあり方を

=そうですね。ボランティア活動はたいへん貴重ですが、それなりに収入を得るなかで責任を果たすこともこれからの定年後には求められるのでしょうね。

 そう思います。また、組織をきちんと運営していくだけでも、多少の収入が必要になります。

=そうしますと、NHKと「ことばの杜」は基本的には資本のつながりはないのですか。

 はい。そこが大事なところです。資本的につながっているのでは、今までの関連団体と変わりません。定年を迎えた段階で雇用は切れています。そのあとは自立してやっていくということです。そういう前提に立った上で、NHKと良好な関係を保ちつつ、NHKの活動にも貢献していければ。そんな想いでいます。
 
ですから、NHKのOB、OGの新しいあり方のひとつと思っていただければ。

有限責任事業組合という組織

=「ことばの杜」は、有限責任事業組合(LLP)という、あまり聞き慣れない組織ですが、これはどんな組織なのですか。

 この法律ができて、まだ3年くらいです。
 私たちの主たる目的は社会貢献ですが、たんなるボランティアではなく、ある程度は生活の糧を得ながら活動をと考えたとき、この制度がぴったりだなと思いました。
 メンバー同士がいろいろなことを話し合いで自由に決められます。つまり、組織を緩やかに運営できます。株式会社になると、窮屈にならざるをえません。そういう意味ではとても有利な組織です。せっかく定年を迎えたのですから、窮屈なことはやめて、仲よし倶楽部のように運営しています。そこがいいところです。
 また、税法上も有利です。荒稼ぎをするのではなく、楽しみながらそこそこの収入も得られればという、定年後の働き方にふさわしい制度、組織ですね。

 有限責任事業組合(LLP)とは

 専門的な知識や能力をもった人や企業が、力を合わせて新しい事業に取り組む共同起業を促進する制度。有限責任事業組合は、株式会社と組合の中間のような事業体で、組合と同じように法人税はかからない。事業で得た利益は出資者(組合員)で相談して自由に配分できる。さらに意思決定や運営も、柔軟にできる。

生活にメリハリが

=「ことばの杜」は2007年の7月の設立ですから、たちあげて半年が経ちました。いかがですか。

 いいですよ。楽しみながら仕事ができますから、快適ですね。集まってお茶を飲みながら話をして。やりたいことができますし。おじさん、おばさんたちがお茶を飲みながら、自由に話をして。ほんとうに仲よし倶楽部みたいです(笑)。

=定年を迎えると、現役時代のように毎朝行くべきところがなくなります。それが意外につらいところですが。

 そうですね。「ことばの杜」にはオフィスが一応ありますので、たしかに行き場所はあります。でも、それでいて毎日必ず行かなければいけないということがない。そこがいいんです(笑)。必要があるときに行けばいい。ですから、生活にメリハリが付けられます。忙しいときは集中もしますが、余裕があるときは休んで楽しめます。それがうれしい。5日くらい連続で休めることがあります。そんなこと、現役時代にはないことです。

=そうですか。たしかに最後のアナウンサー室長時代は激務だったのでしょうね。

 NHKのアナウンサーは全国に500名ほどいます。それをたばねる役目を仰せつかっていましたから、朝から夜までずっと職場に張り付いていました。器用なタイプでもありませんし、なかなかたいへんでした。
 ですから、室長時代の夢は、ウィークデーの昼間にショッピングすること、映画を観ることでした。今は、その夢が叶えられるんです(笑)。

「ことばの杜」 三つの活動

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▲大盛況だった「ことばの杜」第2回朗読会で、宮本隆治、広瀬修子、松平定和の各氏とともに(左から)

=今「ことばの杜」でどんな活動をされているのでしょう。

 広瀬修子、宮本隆治、私、そして最近加わった松平定和の4名が「ことばの杜」にはいます。せっかく豊富な放送経験をもっていますので、それを活かした活動をして貢献していきたいと思っています。

 柱がみっつあります。
 第一に、「話しことば教育」です。子育て層を対象とした「読み聞かせ講座」や児童・生徒を対象とした「話し言葉講座」、大人の方々に向けた「朗読講座」や「朗読会」などを全国各地で実施していきます。

 第二に、日本文学の朗読、アーカイブ事業があります。 「ことばの杜」参加者や多くのアナウンサーの方の協力を得て、日本文学を中心とした朗読アーカイブスをつくって、視覚障害者の方や高齢者の方に向けた朗読の配信を行っていきます。

 第三に、「ことば教育への貢献」です。日本語やコミュニケーションの重要性を広く理解してもらう活動を、教育現場を中心に行っていきます。先生方に向けたセミナーや講演でノウハウの提供など行っていきます。

=いずれも大切な活動ですね。しかもそれを楽しみながらできるのがいいですね。次回は、どんな活動をされているのか、具体的にき聞かせください。

次回は4月16日(水)掲載です。

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